研究課題/領域番号 |
22530321
|
研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
大野 裕之 東洋大学, 経済学部, 教授 (50285459)
|
研究分担者 |
林田 実 北九州市立大学, 経済学部, 教授 (20198873)
|
キーワード | 財政学 / 金融論 / 流通税 |
研究概要 |
昨年度から取り組んでいた、わが国の有価証券取引税廃止を含む流通税改革の株価収益率に対する影響をGARCH型モデルで探求する研究は、今年度に入り、昨年度の学会発表(日本応用経済学会)で受けた指摘事項を研究分担者と深く議論した。そのうえで、それを論文に反映させて、日本経済学会および海外の国際財政学会(International Institute of Public Finance, Annual Congress)で発表を行った。現在は、そこで受けたコメントや意見を踏まえ、学術雑誌に刊行すべく、更なる改訂を行っているところである。 また、昨年度より、アジア太平洋諸国5カ国(中国、韓国、インド、香港、オーストラリア)の株式流通税の制度の詳細を調査し始めていたが、今年度中にほぼそれを完了し、各制度変更の前後での税率なども把握し終えた。そのうえで、日次データで、上記のような我が国の研究に倣った、GARCH型モデルの探求を行い、海外で学会報告を行った。そこで受けたコメントや意見を踏まえて、論文としてまとめ、発表した(東洋大学経済学会『経済論集』第37巻第1号)。また、Ono and Hayashida(2009, Journal of the Japanese and International Economics)に倣った、流通税の取引高への影響の分析を進めるべく、これらの国々の企業について、本国と米国市場の両方で上場されている個別銘柄の特定を進めた。 さらに、高頻度データを入手し、その精査を行い、一部、分析に供することができるように加工を終えている。また、金融流通税に関する研究を含む(第1、2、6章)、書籍『株式税制の計量経済分析』(勁草書房)を刊行した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成21年10月の申請時に申請した助成額を大きく削られたため、高頻度データを購入する際、データ提供事業社と想定した以上の長期に亘り、価格交渉をしなければならなかった。これについては、東日本大震災の影響で、助成総額が一時不確実になったことも、影響している。また、事業社により最初に提供を受けたデータには誤りがあったため、それを矯正して再度出させるなどをしなければならなかった。そのため、データが完全な形でそろったのは、平成23年の10月頃となった。これは、当初の計画より半年以上遅い。それでも、株式流通税に関しては何とか分析を進めているもの、為替市場の流通税に関する分析については、これからという段階で、本年の夏季休暇中に一気に、集中的に進めたいと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)株式流通税については、日本を含めたアジア太平洋6カ国のそれぞれで、高頻度データに基づいた実現ボラティリティ(realized volatility)を算出し終わり、普通最小二乗法(OLS)を用いた分析を了しているが、これをベースにARFIMAモデル等、更なる高度な分析へと発展させる。(2)通貨取引の流通税に関しては、取引ごとのティックデータを用いて、ビッド・アスク・スプレッドを算出し、それと収益率ボラティリティ、取引高との相関関係を検証する。(3)アジア太平洋5カ国で、流通税改革と株式取引高との関連を追う研究を、Ono and Hayashida(2009, Journal of the Japanese and International Economics)に倣って実施する。上記の研究を遂行するために、特段大きな問題は予見されないが、強いて言えば、時間が限られていることである。これについては、一層奮励努力して進めるしかない。
|