まず、金融流通税の中で、昨年度に引き続き株式流通税(取引税)が株価収益率ボラティリティに与える影響を、アジア太平洋5カ国で分析したが、昨年度までのGARCH型モデルに引き続いて、実現ボラティリティを用いたHAR型モデルを用いた分析を行った。その結果、日本・豪州という先進国では税がボラティリティを削減し、中国という新興国では反対に増大させるという、対照的な結果を得たことは、興味深い成果といえる。これは、『経済論集』第38巻第1号に掲載・公表しているが、日本経済学会、日本応用経済学会、日本財政学会、国際財政学会(International Institute of Public Finance)でも報告済みである。現在、英文雑誌への掲載を目指し、分析の改善に努めている。 また、為替の高頻度(ティック・バイ・ティック)データを用いて、ビッド・アスク・スプレッド(BAS)と約定値ボラティリティおよび出来高の相関関係を探る研究を、12個のカレンシー・ペアのデータで進めた。その結果は、BASはボラティリティに負の影響を頑健に与えるという先行研究と整合的な結果を得たが、出来高との関係では、日本円を含むカレンシー・ペアーでは特異なビヘビアを示している。この点は、興味深いが現時点では理由は不明である。この成果は、東洋大学経済学部ワーキングペーパーに掲載申請中であるし、平成25年度中に、日本経済学会、日本応用経済学会、日本財政学会、国際財政学会(International Institute of Public Finance)等で報告予定である。
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