これまで2年間、Household Financeを巡る国際比較研究を進めてきた。その間アジア各国における家計に関する個票データを中心に収集に努め、それら集めたデータをもとに分析を進めてきた。その成果の一部は、国際コンファランス「アジアにおける家計金融」において発表した(2013年2月23日法政大学比較経済研究所)。今年度の成果は以下のとおりである。 (1)CambellによるHousehold Financeの提唱を中心に研究史を整理し、現代金融におけるHousehold Finance 研究の重要性を展望した(靏見誠良)。(2)近年タイ家計における負債比率の上昇について職業別・地域別特徴を明らかにし、その間に起きた政治要因が影響したか否か、検討した(上坂豪)。(3)日本の家計において金融投資に関して新聞、ブログ、ファイナンシャルプランナーなど、どの情報源が有効かアンケート個票データを分析することにより特定した(郡司大志)。(4)日本の住宅借入において低所得家計が変動金利、高所得家計が固定金利を選ぶことをアンケート個票データ分析によって明らかにした(廉東浩)。(5)近年の韓国家計における負債問題を、不動産市場における実物市場と金融市場の連携の点から明らかにし、負債ストレス分析を試みた(Cho Man)。(6)韓国における退職家計において医療問題などの不安が、消費や資産投資行動に歪みを与えている点を個票データ分析によって明らかにした(Kyeongwon Yoo)。(6)中国においてカード発行が拡大しているが、それが銀行経営の効率性を高めた点を明らかにした(松田琢磨、袁媛)。 以上、個票データ分析はこれまで日本と韓国について試みたが、中国、タイについてはこれからの課題である。
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