本研究では、金融危機への対応策を探ることを最終目標として、日本のバブル崩壊後の金融問題について分析を行った。2008年のリーマンショック後には、金融危機を防ぐための方策が練られ、あらためてこれまでの経験を振り返り、いかなる金融規制がどのような影響を金融機関に与えてきたか、ということが注目された。本研究ではそれらの疑問に少しでも応えるべく、日本の銀行のバブル崩壊後の行動について分析した。 具体的な方法は、邦銀について、従来のいわゆるクレジットクランチ(銀行の貸し渋り)に関する実証研究を、より精緻化された方法で、新しいデータを用いて行った。また同時に、これまで明らかにされてこなかった、公的資金の投入、繰り延べ税金資産の算入などといった裁量的にとれられてきた政策が、銀行貸出にどのような影響を与えていたのか、影響があったならどれくらいの影響であったのか、を明示的に分析した。日本では自己資本比率規制をクリアさせるために多くの対策を金融当局が講じてきている。しかし、その効果を評価したものは少なかったので、その点を明らかにすることができたことは貢献に値するといえる。 結論としては、日本の銀行が規制をクリアするために採用されてきた様々な方策は、銀行が貸し出しを増加させることにつながっていた、ということだ。したがって、これらの方策がとられなければ、日本の銀行の貸出額はもっと低かったと考えられる。 欧米の金融機関については、それぞれの金融規制について調べ、その影響について考察した。データが思うようには集まらず、実証研究にまでは至らなかったが、規制の国による違い、銀行への影響の違いについては明らかにすることができた。
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