研究課題/領域番号 |
22530326
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
藪下 史郎 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (30083330)
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キーワード | グローバリゼーション / 世界金融危機 / サブプライムローン問題 / バブル経済 / 非対称情報 / モラルハザード / 資産証券化 / 銀行救済 |
研究概要 |
本研究は、2008年に米国のサブプライムローン問題に端を発した金融危機が世界全体に発展した大不況、1990年代後半に生じた東アジア通貨金融危機など、グローバリゼーションの下で生じた経済危機について、その原因、波及過程、影響などを歴史的に比較するとともに理論的分析を行うことを目的としている。本研究は、研究代表者がこれまで行ってきた「非対称情報の経済学からの金融機関と金融市場に関する研究」の延長線上にある。 本年度は、世界的金融危機に関する先行研究を昨年度と同様に整理をしてきた。また本年度は、スティグリッツ著『経済学』4版の翻訳作業を進めてきたが、その中で日本語版『スティグリッツ入門経済学』第12章「グローバル危機:金融システム・世界経済・地球環境」の訳出作業は本研究課題と密接に関連しており、多くの知見をえた。 本年度はまた、スティグリッツのグローバリゼーションに関する考え方を整理するための原稿執筆に取り掛かった。それは『グローバリゼーションと金融危機:スティグリッツの見方(仮)』として東洋経済新報社から刊行を予定しているが、その構成内容としては次のように考えている。「市場原理主義の前提条件」「所有権・契約と市場の失敗」「非対称情報と逆選択・モラルハザード」「グローバリゼーションの光と影」「世界的金融危機」「途上国と移行経済の問題」「地球環境のグローバル危機」「公平な国際ルールと国際機関のあり方」などである。これらのトピックスを、スティグリッツ経済学の体系を明らかにしながら論じていくが、目下のところ、4分の1程度の進行を見ている。 最後に、これまで和島隆典氏との共同研究成果である論文「ROSCAと社会資本」を青木・浅子返書『効率と構成の経済分析』第9章として刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度においては、(1)金融危機またバブル発生要因とメカニズムと、(2)社会的・心理的要因と投資行動・金融市場との関連の理論的分析、(3)戦後日本における金融機関の破綻に関する歴史的考察を目標としてきたが、スティグリッツの「グローバリゼーションと金融危機」に関する理論整理だけにとどまった。バブル発生と崩壊に関して「合理的バブル理論」の検討にまで入ることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究課題としては、(1)金融危機の発生要因とバブルの発生・崩壊の原因とメカニズムの理論的分析、(2)社会的・心理的要因と投資行動・金融市場との関連の理論的考察、および(3)戦後日本の金融は端についての歴史的考察、を取り上げてきた。今後、『グローバリゼーションと金融危機:スティグリッツの見方』の原稿執筆を進める過程で、主として(1)と(2)の課題に集中することにする。またそれと関連して、「合理的バブル理論」についての考察を始めたい。
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