研究課題/領域番号 |
22530335
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
三ツ石 郁夫 滋賀大学, 経済学部, 教授 (50174066)
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キーワード | ドイツ / 金融システム / 貯蓄銀行 / 競争 / 地域経済 / 社会的市場経済 / 信用制度法 / 公共性 |
研究概要 |
本年度の研究活動において、研究代表者は次の3点を成果(ないしその見通し)として明らかにした。第一に、金融機関諸業態は戦後西ドイツの高度成長過程において急速に業務を拡大したのであるが、なかでも貯蓄銀行がシェアを高め、また戦前ではあまり行われなかった産業金融業務の領域に参入したことによって、民間銀行との競争・対立が急速に激化した。1962年に新たな信用制度法が制定されたが、その審議過程において両者は激しく対立した。この時点までに、従来の金融業務の分業的棲み分けは事実上解消され、そこに本研究が取り扱った競争調査実施の理由があった。第二に、にもかかわらず貯蓄銀行に対して様々な優遇措置が存続したことは、公共団体による保証責任を背景とする貯蓄銀行がドイツ金融業の特質をなし、その存続を維持することが一つの経済政策を意味しているのである。別言すれば、貯蓄銀行が地域経済を支える分散的金融構造がドイツ資本主義の構造的特質の一つを形成し、それが中央レベルだけでなく地方政府の経済・金融政策によって維持されているのである。第三に、しかし60年代において諸業態がユニバーサルバンクとしての性格を相互に接近させたことによって、貯蓄銀行の優遇的地位は是正を迫られた。1967年第二租税修正法において、従来免税特権を得ていた貯蓄銀行に対して一律35%の営業税の税率が課され、また資産税についても資産総額の70%が課税対象とされたのである。同時に信用協同組合や抵当信用銀行に対しても優遇税制が是正された。預金保護については、金融業全体で保証機関を設置することによって競争条件の不均衡を解消することが検討された。以上の過程は、ドイツ資本主義の金融システム的特質を一般的な市場経済の中に構造として組み込む試みとして理解される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
資料収集とその分析によって、研究目的に照らした成果はある程度まとまりつつあるが、その成果を関連分野における研究史の中で位置付け、評価する作業がまだ十分でないため。
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今後の研究の推進方策 |
これまで2年間の研究活動において、大学役職のため、研究活動の十分な時間を確保できなかったが、平成24年度においては、任期終了によって、研究成果をまとめる見通しが立っている。
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