本研究は、日本の産業調整について経済史的視点から分析することを課題としている。対象とする時期は1970年代を中心とし、事例として繊維産業(綿工業)のほか、それとの比較で石炭・造船・化学などの諸産業もとりあげている。 本年度は、繊維産業を中心に研究を進めた。まず産業調整政策の国境措置(貿易政策)について検討するために、アメリカやヨーロッパの先進各国がどのような経済政策上の戦略を持っていたのか、その政策は日本の産業にどのような影響を及ぼしたのかという問題を国際的な視点から検討した。 具体的には、アメリカ国立公文書館所蔵のアメリカ国務省関連文書、アメリカ・ケネディ図書館に所蔵されているケネディ大統領時代の経済政策文書、スタンフォード大学所蔵のGATT文書、European Institute所蔵のOECD文書など、海外での資料調査を行い(一部はwebを通じて資料を入手)、これまで研究者がほとんど着目してこなかった産業調整政策に関連する重要な一次資料を収集した。 以上のような国際経済政策の動向に関する研究のほか、紡績企業の企業財務データ(及び、その他の統計)の収集・入力も進めた。紡績企業の経営面についても、元紡績会社社員の方々から貴重な証言や研究上のアドバイスを得る機会にめぐまれた。 本年度には、繊維産業の産業調整過程の前史に焦点をあてた拙著『産業発展・衰退の経済史-「10大紡」の形成と産業調整』を刊行したが、このほか、1960~70年代の国際経済政策(産業調整政策)に関する論稿を執筆した。
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