研究課題/領域番号 |
22530339
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
今田 秀作 和歌山大学, 経済学部, 教授 (60201943)
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キーワード | 国際通貨体制史 / ポンド体制 / インド植民地支配 / 金為替本位制 / インド・ナショナリスト |
研究概要 |
本年度研究代表者は、第一次世界大戦とその直後の時期を、イギリスの対インド通貨政策史の重要な画期と捉え、戦時に規定された特異な通貨政策と、大戦の結果として諸困難を抱えるに至った戦後期イギリスが自らの世界戦略の一環として展開した通貨政策を、具体的・実証的に検討した。検討に当たっては、1919年設立の「インドの為替と通貨に関する王立委員会」が公表した報告・資料・証言、関係者の間で取り交わされたメモランダム・書簡・電報文(イギリス国立文書館所収)、インド金融事情に関する諸統計資料等、幅広いい史料を利用した。まず戦時期の通貨政策については、以下の諸点が判明した。(1)インドは連合軍へ物資を供給する役割を与えられたものの、戦費調達に苦しむイギリスは、自国および連合国の金・外貨資金を防衛するため、インドの輸出増加に伴う金吸収拡大阻止を政策課題とし、そのため従来のインド金為替本位制を変質させるとともに、インド輸出を抑制するなど、戦前期にない施策を行ったこと。(2)インドによる本国財政の補填と表裏するインド紙幣準備における金属部分の激減は、インド民衆による通貨不信と兌換要求の殺到、ひいては兌換制危機を招来し、イギリスはこれを植民地支配の危機と捉え、アメリカに大量の銀供給を懇願することによりようやく事態を緩和できたこと。戦後直後については以下のことが判明した。(1)国際収支悪化のなかで金本位制復帰を目指すイギリスはインド金吸収抑制策を継続した。(2)折からの銀価高騰に対応するとともにインドにデフレ作用を及ぼすことを目的に、割高なルピー為替レートを設定した。(3)インド・ナショナリストはイギリスの政策意図を見抜き、金為替本位制に代わる金貨本位制を主張した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究の目的」・「研究実施計画」に沿い、またイギリス・インドで収集した一次史料の分析を進めつつ、従来の諸研究にはない、オリジナルな分析と結論を得つつあるから。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の全体計画は、さしあたり、イギリスの対インド通貨政策を4つの時期に区分しつつ、それぞれの特質を明らかにすることにあるが、そのうち第1期から第3期までは概ね分析を終えているので、今後はまず第4期(大不況期)の分析に集中するとともに、各期の分析をつなぎ合わせ、研究全体としての結論を導き出す作業を行いたい。その点に関し、すでに学会で発表した内容とも関連するが、イギリスの対インド通貨政策を含んだ当該期国際通貨体制の特質を、現代の国際通貨体制との比較の上で明らかにすることを課題としたい。
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