「ドイツ近現代史における地域経済=地方自治の相関と国際比較-戦後期を展望して」に関する初年度の研究経過と成果は、およそ以下のとおりである。(1)図書館調査を踏まえた文献・資料の整備については、「ワイマル期におけるドイツ地方自治の歴史的個性と大土地所有」に注目して、計画どおり、ライプツィヒ大学歴史学研究所の支援を得つつ、「ドイツ図書館」(Deutsche Nationalbibliothek)を中心に行った。F.-W.Henningの古典的業績だけではなく、ドイツ東部の実態に関するH.Borcke-Stargordt・B.Buchtaらの研究書をも幅広く検索しながら、それらの熟読に努めた。「ゲマインデの魅力」に富むブランデンブルク型農村社会と、自治意識の覚醒・陶冶なぞ望むべくもないと言われる東プロイセン型農村社会との19世紀末期の違い等を分析の対象として進められるべき「ドイツの地域間比較」という新たな視角の必要性を認識しつつ、ワイマル期における大土地所有の苦闘の様相を、東プロイセンの「ドーナ家」の史実に即して実証的に解明する作業を開始した。 (2)研究成果としては、ここ数年来の課題である「ドイツ地方自治史の基礎研究」を継続して、「ゲマインデ自治の歴史的起源」をめぐる二つの論稿「近代ドイツ史における都市自治制の地域類型と構成原理」ならびに「ドイツ近代ゲマインデ制の地域類型論・序説」を執筆して、『広島大学経済論叢』に掲載した。
|