研究概要 |
「ドイツ近現代史における地域経済=地方自治の相関と国際比較―戦後期を展望して」に関する第二年度の研究経過と成果は、およそ以下のとおりである。(1)図書館調査を踏まえた文献・資料の整備については、「ワイマル期におけるドイツ地方自治の歴史的個性と大土地所有――森林問題との関連」に注目して、計画どおり、ライプツィヒ大学歴史学研究所の支援を得つつ、「ドイツ図書館」(Deutsche Nationalbibliothek)ならびに「ベルリン図書館」(Staatsbibliothek zu Berlin)を中心に行った。K.Haselの古典的業績だけではなく、J-B.Holt,F.Raab, F.K.von Zitzewitz-Kottowらの研究書を幅広く検索しながら、それらの熟読に努めた。「ゲマインデの魅力」に富むブランデンブルク型農村社会と、自治意識の覚醒・陶冶なぞ望むべくもないとさえ言われる東プロイセン型農村社会との19世紀末期の基本的相異を照らし出す「ドイツの地域間比較」という新たな視座の必要性とともに、ドイツの「森林問題」の環境史的視角から見た重要性を認識した。この二つの視点は、ワイマル期ドイツの世襲財産(Fideikommiss)問題の在りかを知る上でも必要不可欠なものである。 (2)研究成果としては、ワイマル期における大土地所有の苦闘の様相を、東プロイセンの「ドーナ家」の史実に即して描いた論考を『歴史と経済』に投稿し、同誌の第216号(2012年7月)の掲載が決定した。さらに、フィデイコミスをめぐるR.Schiller, S.Malinowski, R.Gehrke, M.Wienfortらによる近年の研究の着実な進展に接して、当該の問題に関する加藤の研究の国際的成果の一端を確認した。ドイツ語論文'Vom Fideikommiss zum Familiengut'は、2012年7月刊行の研究書(Internationale Studien zur Geschichte von Wirtschaft und Gesellschaft)への掲載が決定しているが、これも、国際的成果を公表するための継続的作業の一環である。
|