研究課題/領域番号 |
22530345
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研究機関 | 駿河台大学 |
研究代表者 |
市原 博 駿河台大学, 経済学部, 教授 (30168322)
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キーワード | 鉱山業 / 人材形成 / 技術者 / 現場係員 / 炭鉱 / 技術教育 / キャリア形成 / オーストラリア史 |
研究概要 |
日本に関しては、前年度から継続して調査してきた戦前期の三菱鉱業の炭鉱部門における技師・現場係員の育成と職務・キャリアに関する論文を執筆した。そこでは、戦前期の日本企業の人事制度を枠づけた「学歴身分制度」が同社でも存在し、教育資格が職務配分や従業員のキャリアに大きな影響を与える一方で、実地経験の重要性が人事の運用や人材形成の方法に反映されていたことを明らかにした。戦後の北海道の炭鉱の技術者・現場係員を対象とした論文(近刊予定)と併せて、近代日本の炭鉱部門の技術・管理人材の人材形成を一貫した視点で解明することが出来た。また、これらと関連させて、近代日本の熟練工が単なる技能の保有者ではなく、基礎的な学理的知識の保有者でもあることが期待されていたことを明らかにする論文も発表した。これらの成果は、英訳してオーストラリアの研究者に対しても公表する予定である。 オーストラリアの鉱山業に関しては、Australian Mining History Associationの年次大会に参加して、鉱山技師や地質家を中心とする参加者にヒアリングを実施した。また、Australian Institute of Mining Engineersの構成員のデータを後継団体の許可を得て収集し、その分析を進めた。その過程で、上記団体が編纂した団体史に含まれる誤りを発見するなど、新たな知見を得た。その成果は次年度に発表する予定である。オーストラリアの研究者からもその成果を期待されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は日本とオーストラリアの鉱山業史の比較研究である。日本に関しては、戦前期と戦後期を扱った論文を完成させて、ほぼ予定を達成した。オーストラリアに関しては、鉱山業関係者や研究者との交流を深め、また、一次資料を含む資料収集を行い、その分析を進めてきた。その成果は次年度にまとめる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
オーストラリアの鉱山業史に関する研究の取りまとめに力を注ぐ。再度渡豪して上記団体の資料収集をさらに進め、その分析を行う。その結果を上記学会の参加者に開示し、また、研究交流している研究者にメールで知らせて、意見を求め、それらを踏まえて論文の精度を高める。その上で、日本の金属鉱山の技師、管理者に関する情報を可能な限り集め、炭鉱に関して行った研究と併せて考察し、両国の差異・特徴とその要因を解明し、比較史研究をしての実をあげる。また、日本の炭鉱に関して発表した論文を英訳してオーストラリアの学界に提出し、日本の鉱山業史に関する国際的な理解を高めてもらうように努力する。
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