本研究の目的は、日本の鉄道事業(私鉄)がいつ、どのような過程を経て「公共的性格」を備えるに至ったのかを明らかにすることである。両大戦間期における鉄道の「公共的性格」にかかわる議論や事実に光をあて、一次資料の発掘を伴った実証的考察を行った。 以上の研究課題に対しては、3つの方向から接近を試みた。第1は、「都市化」と「重工業化」が進展した都市部における事例分析である。第2は、当該期における地方(ローカル)鉄道事業との比較検討である。第3は、台湾を事例とする植民地の私鉄分析である。鉄道の「公共的性格」とは、決して所与のものではなく、歴史のなかで形成されたものであることが改めて理解されるであろう。
|