研究概要 |
第一に、三井物産の本店および支店の総勘定書(貸借対照表、財産目録に相当)や損益勘定書を三井文庫資料から発掘し、そこから本支店の金融に関する実態の解明を行った。これまで物産全体の財務諸表が作成されていることは承知していたが、本店の営業部門(各課)、内外支店でも財務諸表が作成されていたことは気づかず、かつ長期間分が残されていることも知らなかったが、今回それら財務諸表を発掘し、その内容を検討することによって、初めて長期間にわたり、本支店別に金融の構造、運営が解明できたわけである。この発掘により知りえた財務諸表の存在を整理,分類し、「三井物産の財務諸表リストー明治9-33年」を刊行し、物産研究者に提供したことを付言しておく。 第二に、シドニー支店の勘定掛引継書を入手、それから支店における金融の仕組み、実態を解明する手がかりを得ている。かねて支店における金融実態を知る材料として支店で作成された勘定掛引継書に注目していたが、シドニー支店のそれがオーストラリア国立公文書館シドニー分館に所蔵されていることが判明、ようやく年度末に往訪,多数件の勘定掛引継書を複写できたわけである。期待にたがわず引き継ぎ時点での金融関係の実態(銀行利用状況、外国為替取組、本支店貸借など)を知ることができ、目下解析中である。
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