本研究の目的は、第1次大戦前後から1930年代を対象に、国内小麦需要の多様化・増大に応じた、北米.豪州小麦の輸入拡大の過程を実証的に解明することにある。特に、(a)小麦需要の構造と特質を地域差に留意しながら検討し、(b)小麦輸入貿易の活発化を三井物産.三菱商事など日系商社の活動を通じて探り、また(c)小麦輸入関税政策を1926年.32年の関税改訂に着目して考察することを具体的な課題とする。本年度の研究実績は次の通り。 (1)資料の調査・収集:上記(b)について、米国国立公文書館所蔵の三菱商事・三井物産の北米小麦輸出関係資料を調査し写真撮影による収集を進め、三菱商事の小麦取扱に関する文書群についてほぼ調査を終えた。豪州国立公文書館シドニー分館所蔵の三菱商事・三井物産の小麦輸出関係資料を調査し、所在を確認し写真撮影による収集に着手した。(a)(c)について、国内の資料所蔵機関において、新聞資料の検索、小麦需要の拡大、製粉業の動向などに関する諸資料の複写を進めた。〈旅費〉〈その他〉 (2)収集資料の整理・分析:(b)について、米国国立公文書館収集資料について撮影リストを作成し、データの入力作業を進めた。(a)(c)について、収集資料の画像データ化、データ入力などの作業を実施した。〈物品費〉〈謝金等〉 (3)研究成果の公表:主として米国国立公文書館の資料を用いて、1920年代半ば以降の三菱商事シアトル支店に注目し、北米(アメリカ、カナダ)小麦・小麦粉の仕入活動、および対東アジア、対ヨーロッパ輸出の展開について論文を作成した(刊行は2011年度)。
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