本研究では、農家の子弟が歴史的にどのように就農し、また離農(離村を含む)してきたのかという問題を、経済つまり高度経済成長の影響、および家と村つまり地域社会の規定性の2つの視点から、社会経済史的に考察した。研究の実施にあたっては、農村と農家の現地調査による農民家族と労働力移動・社会移動に関する在地資料の収集と、農民と離農者のライフヒストリー(個人史)の蓄積を重視し、社会経済史の統計分析と総合することを企図した。研究の結果、高度成長と戦後教育の定着による農家の歴史的変化と、家と村に規定されて変わらなかった農家の両面が明らかになり、戦前と戦後、後者のうち高度成長期以前と以後の各時代の歴史的個性を農家のあり方から具体的につかむ手がかりが得られた。
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