本研究課題は,日本の中小企業が存続・成長していくために,いかにして価値を向上させるかを,多様な側面から探ることを目的としている。これまで,中小企業の価値向上を支える要素を,市場面,人材・組織面,技術面という3つの側面に分けて検討してきた。 本年度は研究最終年度であることに鑑み,特に組織面と技術面の考察を強化した。 組織面においては,企業の理念の生成とその理念を普及させるためのプロセスを,歴史的経緯と環境変化への対応もふまえながら,事例も援用しつつ探った。企業の理念が生成され,変化する経営環境の中でそれを様々な形で普及させようとするプロセスは,中小企業の生み出す製品の価値に大きな影響を与えると考えられるからである。研究成果を,学会誌への英文投稿論文として発表するための作業もおこなった。 技術面においては,大別して3つの取り組みがある。第一に,前年度に引き続き中小企業の業務プロセスに着目し,中でも業務顧客のプロセスを自社の業務プロセスとリンクして考えることについての意義と方策について考察を深めた。第二に,グローバル化と価値向上の関係を探った。中小企業においてもグローバル化が急速に進展しており,これにより競争が激化し利益を確保することが困難になりつつある。そのため価値向上に,一層真剣に取り組まなければならない。そこで海外生産を中心に検討した。第三に前年度に投稿した論文が,研究成果として公刊された。 以上により,中小企業の価値向上について,包括的に研究することができた。
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