研究概要 |
平成22年度は,半導体サプライチェーンにおける企業連携の構造の違いがもたらす仕組みの優位性を研究するための基本的なモデルの開発に取り組んだ.Erkoc and Wu(2005)では,半導体産業における機器メーカーとIDM(統合型半導体製造業者)の間の垂直的企業連携において,機器メーカーがIDMのキャパシティについて,オプション契約を締結することにより,IDMの製造キャパシティ投資のリスクが軽減されて,製造キャパシティ投資が増加し,サプライチェーン全体最適化の方向に進むことが理論的に示されている.このモデルにおいて,IDMの半導体価格を所与とするという仮定を課しているが,JOMS誌に掲載された佐野,松尾(2011)では,価格を決定変数とすれば,サプライチェーン全体最適な生産能力予約契約が存在することを証明した.JOMSA全国大会において,大村,松尾(2010)では,垂直的企業連携におけるリスク回避度を考慮した場合のモデルの考察結果を報告した.さらに,機器メーカーとIDMとの水平的企業連携についての理論的な研究を行い,佐野,松尾(2010)では,水平的なネットワークで,期待利益をサプライチェーン全体最適化するキャパシティ予約契約が存在するための条件を導出し,報告した.Washington University in St.LouisのKouvelis教授を研究協力者とする共同研究では,半導体サプライチェーンにおける水平的企業連携についての理論開発を進めている.途中結果は,米国のPOMS学会とINFORMS学会において,Wu,Kouvelis and Matsuo(2010a,b)として発表した.さらに,半導体産業の企業に関する公表されている財務データ等を収集し,サプライチェーンの構造分析に必要なデータベースの構築を開始した.
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