研究課題/領域番号 |
22530362
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
松尾 博文 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (50312814)
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キーワード | 経営学 / オペレーション管理 / サプライチェーン・マネジメント |
研究概要 |
平成23年度は、主に、半導体サプライチェーンにおける水平企業連携の理論の開発に取り組んだ。ここで、水平企業連携とは、半導体産業において生産キャパシティをもつIDM(統合型半導体製造業者)がファンドリに生産委託をすることを指す。この場合、同じ製品の製造がIDMのみ、ファンドリのみ、さらに、両者で同時に行うという選択肢をもつことになる。東日本大震災においては、ルネサスエレクトロニクスの那珂工場が被災し、トヨタやホンダ用の車載マイクロコントローラーの製造が長期間停止し、自動車の製造に多大な影響を与えた。これは、特定の製品の製造が那珂工場のみでしか行われておらす、製造の移管が困難な製品の場合、サプライチェーンのボトルネックとなってしまったことによる。このような事態は、本研究における水平企業連携を実施することにより適切に回避できる可能性がある。水平企業連携で考慮を要する点は、製造キャパシティをもつ2社が需要の変動と不確実性のもと、製造キャパシティを確保することによって生じるリスクとリターンの配分を契約を通じてどのように決定するかである。Washington University in St.Louisとの共同研究を通じて、最適化の理論、確率過程の理論、ゲーム理論をもとに、2本の論文を書き、海外の査読付き雑誌に投稿し、現在、その査読結果をもとに論文を改訂中である。さらに、大村,松尾(2011)は査読付き学術雑誌のJOMS誌に掲載された。この論文では、垂直的企業連携における小売企業のリスク回避度が卸売契約における価格と発注量にどのような影響があるかを明らかにした。一方、これらの結果を含めて、半導体サプライチェーンの企業連携、震災等のリスク管理について、3つの国際会議で招待講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、半導体産業におけるIDM(統合型半導体製造業者)の柔軟性を増大させる手段として、サプライチェーンの全体最適に繋がるような企業間連携の契約形態を考察することにある。2年間の研究で、水平企業連携に関する契約の理論はある程度整備できた。
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今後の研究の推進方策 |
東日本大震災の影響で、ルネサスエレクトロニクスの那珂工場が被災したことで、本研究の意義が製造業の需要変動に対する柔軟性の増強だけではなく、サプライチェーン全体のリスク回避の問題に直結するという社会的な意義があることが明確になった。当初の達成目標のサプライチェーンの構造の解析だけではなく、災害リスク管理の側面も研究の項目に含めていきたい。
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