研究概要 |
本年度は,理論とその検証を整備し,研究成果の公表に努めた.半導体業界において,需要の不確実性に対応するサプライチェーンの柔軟性を実現するために,IDM(統合型製造業者)がファンドリと連携する製造キャパシティの水平型連携を考察した.Wu, Kouvelis and Matsuo(2012)では,水平的連携の契約形態をとる場合,需要を一定割合で配分する契約とキャパシティ予約契約をゲーム理論を適用し、また,シミュレーションを使った検証を踏まえて比較した.両方の契約における最適な変数の決定方法,どのようなケースにどちらの契約が選択されるかを明らかにした.また,Wu, Sano, Kouvelis and Matsuo(2012)においては,水平的連携であるキャパシティオプション契約が,サプライチェーンの利益の全体最適化を実現する条件を理論的に導出した. 東日本大震災のような大規模災害を経験し,製造キャパシティの柔軟性の重要性が広く知られるようになった.このような柔軟性は,本研究におけるIDMが水平企業連携を実施することにより適切に実行できる可能性がある.半導体サプライチェーンの寸断についての考察の論文,Matsuo(2012)は,オペレーションズ・マネジメントの最も権威のある国際大会において, The Jose A.D. Machuca P&OM World Conference Highly Commended Awardを受賞した. 垂直的企業連携に関して,Ohmura and Matsuo (2012b) は、卸売契約において,返品可能であるか否かの2つのケースについて,売買の関係者のリスク回避度が価格と発注量にどのような影響があるかを明らかにした.リスク回避度は企業連携の契約形態に影響の強い要素であるが,既存研究が少ないので、さらなる研究が必要であることが示された.
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