本研究は、中国自動車市場において日本型自動車流通システムが多様化する理由を明らかにするものである。 最終年度である本年度(平成24年度)の研究課題は「中国の自動車産業・流通政策の経緯・動向分析」及び「日系自動車メーカーのチャネル戦略分析」であり、これまでの研究で明らかとなったように、両者は密接に関連している。研究方法としては、前者については、主に文献・資料研究によって、また、後者については、現地インタビュー調査によって研究が進められた。自動車流通システムを段階別にみると、日本型自動車流通システムでは、基本的に卸売り機能が内部化されているが、中国のトヨタについては、合弁2社のうち1社において卸売り機能が外部化されており、日系自動車メーカーにあっては、中国自動車市場において、卸売り段階における多様性の存在が明らかとなった。ただし、垂直統合という点でみるなら、両者は同じ狙いを持つものと考えて良い。続いて、小売り機能についてみると、何れの日系自動車メーカーにあっても、日本型のディーラーマネジメント、即ち、垂直統合が実施され、かつ、そのもとで店舗運営が行われていることがインタビュー調査から明らかとなった。そして、そうした日本型ディーラーシステムの中国自動車市場における浸透が、中国の自動車流通政策に基づいたものであることはいうまでもない。このように、中国における日系自動車メーカーは、合弁先との関係から、必ずしも、日本と同じ自動車流通システムを全体として構築しているわけではないが、小売り機能に限ってみるなら、ディーラーに対するマネジメント、また、店舗の運営について、日本的な仕組みが導入され、幅広く実践されている。言い換えれば、日本型ディーラーシステムは中国自動車市場で評価されており、日系自動車メーカーの競争力発揮のための基盤となっている。
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