本研究は、研究蓄積が進んでいる知の共有と学術的研究の少ない規範の共有を、コミュニケーションを通じた共有という視点から統合的に捉えるための理論的・実証的検討を行ってきた。3カ年計画の最終年度である平成24年度の成果は以下の通りである。 まず、昨年度までの質問紙調査の分析結果で規範の共有及び知の共有と強い関連性があることが見いだされた組織アイデンティフィケーションに関する文献レビューを行い、学会発表を行った。それによって、規範の共有及び知の共有に、アイデンティフィケーションが深く関わっていることを明らかになった。同時に、これまで組織コミットメントと組織アイデンティフィケーションが混同されてきたという問題に着目して、両者の弁別可能性について実証分析を行い、論文として刊行した。 本研究での重要な目標の一つとしていた規範の共有の典型としての経営理念浸透の測定尺度の確立は昨年度でおおむね終了していたため、その研究成果の社会還元を図るべく一般雑誌等に寄稿するとともに、企業の実務担当者向けにセミナーを行った。そうした機会を通じて、時系列的な分析を行うことでモデルの妥当性を検証すべく、過去の質問紙調査を実施した企業に対して再調査について提案を行った。 以上の検討を踏まえて、組織コミュニケーションよりもむしろ組織アイデンティフィケーションを鍵概念した知の共有の規範の共有の統合的に扱うモデルの構築を行い、論文の刊行や学会での発表を進めていく。
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