研究概要 |
本研究の目的は,組織間学習を促進・抑制する要因を体系的に解明し,実証的に検証を行うことである。組織間学習とは,組織自らの過去の経験に基づいて発生する経験学習とは異なり,他組織経験の観察,関連情報のエンコード,因果関係の推測に基づく学習の形態を意味する。この研究を通じ,「対岸の火事」をどうすれば「他山の石」に変えることができるのか,よりよく他の組織の経験から学習できる条件とは何か,を明らかにしていくことを目的としている。 平成22年度では,分析が不足していた組織学習の認知的な側面に関する文献調査を行った。特に,認知のバイアスやヒューリスティックスによって,経験の蓄積が必ずしもルーティーンの変化,すなわち組織学習をもたらさないケースに関する文献を読み進めた。その1つには,ホットストーブ現象と呼ばれるものがあり,これは,ある行為が失敗をもたらしたとき,マネージャーはその行為と失敗の因果関係を誤って理解し,本当であれば別の理由で失敗したにもかかわらず,その行為が失敗の元凶と考えてしまうことである。このように自らが経験をしても学習が必ずしも円滑には行われないことから,代理学習や組織間学習においては,このような学習の失敗がより頻繁に発生していると考えられる。 これらの文献調査に加えて,ヒアリング調査をいくつか行った。これらの調査では,他社の経験を企業はどのように見ているのか,そして,どのように学ぶのか,についてのプロセスを調査した。
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