本年度も引き続き社会問題、すなわち複数の主体による共同解決を必要とする複雑な問題を解決するために本研究が提示している4つのモードについて、その中でも特に複数の共同企業家の生み出す事業による複雑な問題の共同解決について掘り下げた。本研究の成果は、以下の通りであった。第一に、市場取引でも、政府でも、慈善でも解決し得なかった地域再生という社会問題の解決を、共同企業家と問題解決コミュニティを中心とする、(持続性を持った)事業を通じておこなう共同問題解決で説明するための一つの枠組みを与えたことである。第二に、事例研究を通じて、その問題解決コミュニティ内に特有な共同企業家の活動や共同問題解決を促進するような関係者間の関係様式について詳細に分析を加え、企業家的な人々による「複雑な問題の共同解決」という枠組みで説明した点である。第三に、複雑な問題を共同解決する企業家という共同企業家概念を提示することで、(社会企業家を含む)問題解決者としての企業家という企業観を提示したことである。この共同企業家については、下記書籍に論文が所収される予定である。 ・稲葉祐之.「共同企業家」,宮本又郎・加護野忠男+企業家研究フォーラム 編,『企業家学のすすめ(仮題)』,有斐閣,近刊.
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