本年度は、フランチャイズ・システムにおける加盟店の店長の内発的動機づけが店舗運営に与える影響を考察するために、検証すべき仮説構築に向けた文献調査と仮説を検証するための質問票調査を実施した。まず、文献調査については、質問票による調査を実施する前提として、内発的動機づけに関する文献を包括的にサーベイした。そこでは、心理学の分野において、外発的動機づけが内発的動機づけに対して与える影響に関する多くの研究蓄積が存在することが明らかとなり、その内容の吸収に努めた。特に、教育分野を中心に、外発的動機づけが内発的動機づけを低下させることを示す数多くの理論的・実証的研究の理解を進めた。また、内発的動機づけがイノベーションにプラスの影響を与えるのに対し、外発的動機づけがマイナスの影響を与えるという研究の理解にも努めた。次に、文献調査を踏まえ、大手外食チェーン3社の加盟店店長に対して、郵送による質問票調査を実施した。具体的には、文献調査の結果を踏まえた上で、フランチャイズ加盟店の店長の動機づけの水準を計測できる質問票を作成した。続いて、各社のホームページ上に掲載されている店舗情報をもとに送付先リストを作成し、3463の調査票を送付した。回収された調査票は357であり、回収率は10.3%であった。現在は、回収された調査票の整理を進め、共分散構造分析を実施中である。共分散構造分析によって、内発的動機づけが外発的動機づけに与える影響の方向性が明らかとなると考えられる。その結果によって、フランチャイズ・システムにおいて、店舗運営をオーナー店長と雇用店長のいずれに委ねることがより効果的であるかという点に関する何らかの示唆が得られると考えられる。
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