本年度は、近年増加している複数店を保有する加盟者(マルチユニット・フランチャイジー)の動機づけが、単独店加盟者の動機づけと異なるのかどうかという点に焦点を当てて分析を行った。具体的には、(1)当初のフランチャイズへの加盟を決定づけた動機とその後の複数店を保有することを決定づけた動機の比較分析、(2)マルチユニット・フランチャイズの選択行動を決定づける、心理的要因を考慮したモデル構築による分析を行った。動機の解明およびモデル分析のために質問票調査を実施した。分析の手順は次のとおりである。 まず、文献調査については、質問票による調査を実施する前提として、マルチユニット・フランチャイズに関する文献を包括的にサーベイした。それによると、米国やオーストラリアなどの海外では、それほど多くはないものの実証分析が行われていることが判明した。また、心理学分野では、近年発展が続いているパーソナリティ理論に関する文献を調査した。 次に、文献調査をもとに、マルチユニット・フランチャイジーが多く存在する大手コンビニエンス・ストアの加盟者に対して、郵送による質問票調査を実施した。具体的には、文献調査の結果を踏まえた上で、フランチャイズ加盟者の加盟動機、パーソナリティ、店舗経営状況などを計測する質問票を作成した。続いて、対象企業のホームページ上に掲載されている店舗情報をもとに送付先リストを作成し、2987の調査票を送付した。回収された調査票は192であり、回収率は6.4%であった。回収された調査票の整理を進め、共分散構造分析などを実施した結果、次のようなことが現時点では判明している。(1)海外の研究と異なり、加盟時点の動機とその後の複数店の保有を決定づける動機には大きな違いがみられない、(2)加盟者のいくつかのパーソナリティは、マルチユニット・フランチャイジーとなることに影響を与えている。
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