本研究は、育成と連携の観点から、韓国と日本の自動車産業のサプライヤー・システムを比較・考察し、その構造的な特質と進化経路を明らかにするためのものである。 初年次の平成22年度における研究計画は、先行研究調査、2次データ収集とデータベース化とそれらの分析、企業訪問・インタビュー調査であった。 第一に、先行研究レビューと2次データ収集・分析を実施し、その成果を論文として発表した(李(2010))。この論文は、1990年度末の経済危機以降の韓国自動車部品調達システムの全体像を検討し、その構造的な特質と問題点を導出したものである。また、日本自動車産業のサプライヤー・システムについては、業界資料を網羅的に調べ、部品取引の脱系列化とネットワーク化が見受けられるここ10年間における主要システム部品の取引関係のデータ・ベースを構築しつつある。 第二に、個別の企業調査においては、韓国の代表的な自動車メーカーである現代・起亜グループを実地調査し、そこで明らかになった、企業再生要因をリーダーシップ、安定化プロセス、コアプロセスの観点から克明に分析した。その成果は、論文として学会誌に掲載されている(李・平野(2010))。 第三に、当該年度の交付申請書時の計画通り、韓国と日本における自動車の委託生産についても研究を進めてきた。これらの研究は、自動車の部品取引の特性をより克明に浮き彫りにする対比研究として、本研究に資するものと考えられる。 本研究を遂行するため、データの入力と統計分析、実地調査(現代・起亜自動車本社、牙山工場、現代モービス、現代自動車の台湾支社、極東開発、モリタ等)を中心に研究費を適切に執行してきた。
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