24年度は堀場製作所の一般従業員と、ローランドの代替えとして、たねやの中間管理者・一般従業員にインタビュー調査を実施した。しかし、たねやの分析では、理念が浸透していることが導出できなかった。そのため、各層に調査ができた堀場製作所と、一般従業員の調査はできなかったものの、それ以外の調査は有効であったローランドの計2社を元に、包括概念の構築に向けて、あらためて分析を行った。 今までの調査から理念浸透の「内面化」に関しては、すでに明らかにすることができている。そこで今回は、「理念の内容表現」に着目をし、理念の内容が具体的な企業としてローランドを、抽象的な企業として堀場製作所を挙げて検討をした。その結果、理念の内容は①理念浸透プロセスの順序と、②理念浸透の方法・施策に影響を与えることが明らかになった。①では、理念の内容が具体的であれば、頭での理解が進みやすいため「理解→行動」というプロセスをとるが、抽象的な場合は、既有知識だけで、理念の文言を簡単に読み解いていくことはできず、行動することでその意味を理解していく、「行動→理解」のプロセスをとることが分析できた。②は理念の内容が具体的であれば、現実の状況に理念を当てはめやすく、それを反映させた、こまやかな浸透方法や施策を打ってでやすいのに対し、抽象的な場合は間接的な方法や施策がとられることが分析できた。 以上より、3年間の研究を総合して、「内面化」においては、経験が大きな役割を果たし、個人が質的に向上することで理念浸透が進むことと、個人の年齢や状況により理念浸透のモデルとなる存在が変わることを、また「定着化」においては、理念の内容が浸透プロセスに影響を与えるため、それに応じた浸透施策をとることが有効であることを明らかにすることができ、所期の目的を達成することができた。
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