本研究は,日本企業が欧州で展開する地域マネジメントについて地域統括本社制の視点から考察することを目的に行うものである。 平成24年度は,前年度実施した欧州における地域統括本社に関するアンケート調査の分析を行った。この結果,①地域統括本社の統括範囲が以前よりもロシアやアフリカなどに拡大している,②日本人派遣社員の減少傾向がみられた,③統括機能は,生産よりも販売機能,ファイナンスや法務関係のスタッフ機能,地域戦略の策定や現地法人のモニタリング機能などを中心としたものが多かった,④現地法人は地域統括本社に報告する形が明確になってきている,⑤地域統括本社の成果では,ファイナンスや法務関係,地域戦略の策定において成果があったとする回答が多かった,⑥今後も統括機能を強化するとした企業が多くみられた。 また,このアンケート調査の結果を補足するため,欧州に立地する地域統括本社においてインタビュー調査をロンドンとアムステルダムで実施した。今回訪問したのは,NECヨーロッパ,YKKヨーロッパ,ヤクルトヨーロッパ,となっている。この調査を通じて明らかになったこととしては,日本本社の延長線上で行われていた地域統括マネジメントが,欧州という地域で独立した形でビジネスモデルを構築することに迫られていること,そのため,地域統括本社に権限が委譲されつつあること,地域統括本社における現地化が進んできていること,などが明らかとなった。 以上のことから,欧州における地域統括本社は,新しいビジネス環境における地域統括本社を中心とした新しいビジネスモデルの構築を模索していることがわかった。 本研究を通して得られた主な知見は以上の通りである。今後は,これらの知見を活かし,アジアにおける地域統括本社の実態を調査する予定である。
|