大手素材化学メーカーの30歳代前半の優秀な研究開発者10名を対象としたインタビュー調査(2010年7月)の結果、入社5~7年目に成長の節目となる大きな転機が集中し、その内容は顧客対応や部署異動などが大半を占めていた。ビジネスの世界での多くの研究開発者は、狭い研究領域の中で技術的な成果だけが求められるわけではなく、顧客対応や異なる技術分野を経験することによって次元の異なる知識や能力および視野拡大が一人前の研究開発者に成長するための重要な要件の一つであることが明らかになった。 次に、大手電気機械メーカーの30歳代前半の製品開発者12名を対象として成長の転機となる仕事経験と先輩や上司との関係を中心にインタビュー調査(2011年1月)した結果、転機となる仕事経験は2~3回程度、先輩や上司との関係は1~2回程度あった。転機となる仕事経験の内容は非常に困難でチャレンジャブルな仕事の成功体験が大半を占めており、その経験を通して自信や自己効力感を獲得することが明らかになった。また、転機となる先輩や上司との関係を通してモデリング学習や厳しいフィードバックによる学習をしていた。さらに、ハイ・パフォーマとそうでない者を比較した場合、前者の方が社会人として早期に困難でチャレンジャブルな仕事の成功体験をしており、共通して優れた上司との関係がみられた。つまり、30歳前半の優秀な製品開発者は、入社後の早い時期からチャレンジャブルな仕事の成功体験をし、優れた上司とのコンタクトが特徴的であることが明らかになった。
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