当該研究の目的は、東北地方にある請負コミュニティに対する複数のフィールド調査をもとに、それらにおいて事業活動を担う人的資源がどのように育成・活用されているか、また、ビジネス・イノベーションの源泉となる知識がどのように蓄積・創造されているかを経営学的視点から明らかにすることにある。このため、平成22年度は以下のような内容で研究を進めた。第1に、人的資源管理論、キャリア論、イノベーション論、組織間関係論、組織学習論、ナレッジ・マネジメントといった領域における理論的枠組みを、各フィールドの分析に適用するため、各領域の文献研究を進め、分析枠組みを、より精緻化することを目指した。各領域の理論的な枠組みを構築することはもちろんであるが、研究代表者および分担者間の問題意識のすり合わせを行うことも重視した。第2に、全国の建設事業者にたいして広範に、経営者の人的ネットワーク、組織文化、請負専門職コミュニティの文化、等を中心とした総合的な質問票調査を実施した。第3に、製薬業に対しては、人材のアウトソーシングを派遣から請負に変えた工場現場における、委託側、受託側組織の従業員それぞれに広範なインタビュー調査をおこない、このような変化にあたって双方の従業員の認知面や行動面での変化のプロセス、変化の阻害要因、全体でのパフォーマンスにつながる要因などについて、インタビュー調査を実施した。以上の準備作業的な研究を通じて、次年度以降の発表につなげる予定である。
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