研究概要 |
平成24年度はカナダ・ケベックの産学連携支援NPOであるINOを訪問し、実践事例についての知見を蓄積した。また、科学コミュニケーションの観点から、サイエンスアゴラのイベントを通じ、寺院とアカデミアの有する知識の媒介機能とその組織経営のあり方を比較分析した。年度後半には研究成果の新たな展開として、「生のガバナンス研究会」を設立し、多様な分野の研究者を交えて生命や生活の観点から個人と社会との接点と媒体としての中間機関のあり方を模索した。また、国、資金配分機関、研究開発機関等の政策実務家と政策研究者が連携し、政策現場の現状や研究者が提供できる政策ツールについて率直に議論し、知識交流を進めながら、取り組むべき政策課題や望ましい政策形成や資源配分のプロセスをデザインすることを目的とした「政策デザインワークショップ」を開催した。このほか、総合研究大学院大学や大学教育研究フォーラム、民間企業においてQ方法論を応用したワークショップを通じて組織における個人の学習のあり方について分析と実践を行った。さらにワークショップのあり方についてのフューチャーセッションを企画・実施した。 具体的な研究内容として、中間機関について、これまで機能、組織形態、外部主体との関係性や知識フロー上の位置づけを類型分析してきたが(吉澤・西村・田原・安藤 2010, 2011)、機関の指向性(価値/制度)や活動動機(内発的/外発的)、組織と個人の役割に着目しつつ、実際の活動と照らして中間機関のダイナミクスを明らかにした。その結果、「中間機関」は単なる組織論を越えて、価値指向、個人性の強い活動も重要であることがわかり、指向性と活動動機のマトリクスにより「組織」「権威」「動力」「代理・仲介」といった異なる側面を遷移しながら外部環境に応じて生存可能な戦略を図っていることが明らかとなった。
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