近年イノベーションをめぐる環境は大きく変化しているが、その本質は、従来、大企業内の組織が担ってきたイノベーション推進の中心的役割を、大学やベンチャー企業等から構成され、しかも既存の組織の枠組みを越えた「エコシステム」が担うようになってきたことにある。本研究はこのようなオープン・イノベーションの環境下における、イノベーション・エコシステムに最適な会社形態を研究し、イノベーション促進のメカニズムを解析しようとするものである。 本年度は、ベンチャー企業に関する各種の商用データベースや公開データベースの分析環境を整えると共に、独自データに基づく東京大学関連ベンチャー企業のデータベースや東京大学における起業家教育に関するデータの整備も進め、その分析の一端は起業家教育に関する国際会議の場で発表した。また、イノベーション・エコシステムを構成する個々のベンチャー企業の発展に与える各種の外部機関の関与に関する分析を、インキュベーション支援やCorporate Venture Capital活動の視点からも分析し、スタンフォード大学と共催するワークショップにて研究発表した。さらに、東京大学における企業との共同研究実績のデータを用いて、大企業におけるイノベーション・エコシステムへの対応や活用の実態についても調査研究を行い、その研究成果の一端は、査読付論文誌への掲載が決定している。
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