平成22年度は、研究活動は主に現地調査とアンケート調査に集中してきた。まず、中国の国有企業(3社)、そして中国の民営企業(3社)に対してインタビュー調査を行ってきた。インタビューの内容を整理し、中間報告にまとめた。そして、上海社会科学院人的資源研究センターの協力を得て、上海市の人材移動と企業のイノベーション活動との関係に関するアンケート調査のデータを獲得した。現在データに対する統計分析を行っているところである。 中国企業へのインタビュー調査により、次の暫定的結論が得られた。まず、中国の企業では、持続的競争力が十分に持っていないうちに、外国企業と激しい競争に局面するようになった。そのため、企業は、自ら研究開発を行い、1から新製品や新技術を開発するより、直前の競争において生存するためには、海外からの技術を模倣し、それを改良していくのは最も手早い。そのため、即戦力をもっている人材をヘッドハンティングの会社などを利用して獲得し、その代わりに、即時に技術開発のできない人材を排除する雇用政策を採るようになった。他方、労働供給が過剰になっている中国の労働市場はそれを強化するようになり、やがて人材の流動性が高くなる。その結果、逆に企業が自ら開発能力を育成する体制を維持することが困難になり、クローズドイノベーション活動はますまずできず、オープン・イノベーション活動に依存していくしかなくなる。
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