本研究は、CAE(Computer Aided Engineering)の活用が製品開発プロセスと製品開発組織にどのような影響を及ぼすかを明らかにし、我が国製造業の「ものづくり力」向上に資することが目的であり、本研究の最終年度である平成24年度は当初の目的を達成するための総括と研究成果の公表を行った。具体的には、前年度までに実施したDE(Digital Engineering)ツール導入に関するアンケートおよびヒアリングの分析に加え、本年度は仮想的に構築したシステムモデルを用いて、協力企業に対して実証実験を行うと同時にフォローアップのヒアリングを実施した。これらの実証データを通して「広義のCAE活用の効果はシステムモデル構築能力に依存している」との仮説の妥当性を総合的に評価した。これらの研究成果は11月にオランダで開催されたInternational Conference on Innovation & Managementで発表した。また、システムモデル活用の有効性を検証した論文をInternational Journal of Mechanical and Aerospace Engineeringに投稿した。さらに、これらの成果を経営関係の研究者とはALD(Analysis Led Design)導入と製品開発組織の関係について、工学関係の研究者とはシステムモデルの意義に焦点を当てて議論し、それぞれの分野における意見を再度統合して、CAEを企業パフォーマンスの向上につなげる前提となる組織のケイパビリティと、効果的なCAE導入プロセスを具体的に示すことで一歩踏み込んだ形での技術経営領域の研究成果を得ることができた。
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