近年アジア諸国の製造業の急速な発展につれて、自動車産業や電気・電子産業など最終完成品の実態調査と分析はかなり多く行われてきたが、サポーティング・インダストリ(裾野産業)の製品開発力に関する学術的分析は十分に行われていない。そこで本研究では、裾野産業の製品開発力を主としてフィールドワークによって明らかにしようとするものである。昨年の調査で明らかになったことは、裾野産業は特注品化に対する大きなプレッシャーにさらされる産業だということであり、そのために、製品の標準化にむけた製品戦略の如何が、経営成果に大きな影響を及ぼすということである。 そこで本年度は、長期安定的に高収益をあげている典型的な裾野産業であるマブチモーターをとりあげて、その製品開発力を分析した。本社で3回のインタビューを行うと同時に、台湾マブチを訪問して現地調査を行った。そこから明らかになったことは以下の2つに集約できる。第1にマブチモーターは早い段階から標準化の考え方を製品戦略に取り込んできており、標準化を維持するための階層型製品開発体制をつくりあげたということである。第2に、マブチは早い段階からアジアに進出した企業として広く知られているが、その国際分業体制と標準化を組み込んだ設計思想とは密接な関係があるということである。 以上の知見のうち、特に製品開発戦略と組織体制に関する分析を、2編の学術論文としてまとめた。
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