研究概要 |
新興市場ビジネスを概念的に理解する方法として,企業活動とビジネス立地が双方に影響を及ぼし合いながら,双方が進化するというFLフレームワークを提案した。このフレームワークを前提にすると,企業の経営活動は,各国が保有する販売市場,生産要素,研究開発をはじめとする知識にアクセスし,利用することで競争優位を構築できるとする「メタナショナル経営」をより立体的に理解できる。メタナショナル経営はややもすると,外部の知識をいかにグローバル企業が消化しうるかという組織論に傾きがちであったが,戦略論と立地論的理解も重要であることを示すことができた。 平成22年度の事例発掘は,主にイスラーム諸国(トルクメニスタン,ウズベキスタン,カザフスタン,トルコ)での調査を通じて,イスラーム思想をどのように理解すべきか,これらの市場における起業やビジネス活動がイスラーム思想からどのような影響を受けたかについて検討した。バングラデシュのグラミン銀行を事業創造の事例と理解して,その背景を探り,イスラームの基本思想に基づき,独自のレンズを通して,モノを見る目が不可欠であること,同時に現実を的確に把握し,イノベーションによって,目前の課題を解決し,事業をシステム化することが重要であると指摘した。 イスラエルでの調査は,同国に眠る知識資源にどのようなものがあるか,それらの資産にグローバル企業はどのようにアプローチしているのか,課題は何かについて検討した。次年度の他市場での調査結果と併せ,今後順次発表の予定である。
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