研究概要 |
新興市場ビジネス研究のなかで,メタナショナル経営論をどのように位置づけるべきかについてのフレームワーク作りを継続した。ビジネス立地の規定要因が企業活動にもたらす立地資産と取引コストをもたらすビジネス制度によって構成されるものと理解し,新興市場ビジネスを定式化した。そのうえで新興市場に眠る経営資源を発見し,企業内に取り込み,競争優位につなげるメタナショナル経営のパラダイムを,企業活動とビジネス立地の共進化という経営プロセスとして理解した。 当該年度は,事例発掘のためのフィールド調査を東アジアとロシアを中心に実施した。中国とタイでは,日系企業の現地生産の実態調査を踏まえ,それらの企業が現地で獲得した知識をどのように本国や他の市場に移転しているのかについて,組織メカニズムの文脈で検討し,メタナショナル経営の新たな事例として分析した。現地企業についても同様に,他国で獲得した知識を本国に移転し,活用するプロセスをメタナショナル経営として解明した。 他方,ロシアでは,複数のソフトウエア会社とボーイング社のメタナショナル経営の事例について,フィールド調査と文献研究に基づいて事例研究を行った。ボーイング社については,更なる調査が必要なことが判明し,次年度の課題が明らかになった。 当該年度の研究成果は,いくつかの学会や研究会において発表の機会を得て,内外の研究者と議論を重ね,次なる課題と研究の方向性が明らかになった。これまで執筆した論文や図書についても,さまざまな形で取り上げられ,評価・批判されており,次年度の研究に向けて示唆に富むものとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論研究は順調に進み,事例発掘のフィールド調査と文献調査も予定通りであるが,それらの成果についての論文執筆は途上である。ただし,研究報告を複数回実施し,他の研究者との議論を重ねており,論文執筆にとって貴重なヒントを得ている。
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今後の研究の推進方策 |
フィールド調査は,第一にロシアのボーイング社現地法人での社長インタビューとシベリアの合弁生産会社での調査を計画している。第二は西アジア,中央アジアを含むアジア域内でメタナショナル経営を行う,内外の特徴的な企業を抽出し,現地調査を実施する予定である。 次年度は,本研究の最終年度に当たるため,論文執筆,学会発表のペースをやや引き上げ,研究成果を学界や社会に還元する活動に力を入れる予定である。
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