メタナショナル経営論を国際ビジネス研究,さらには新興市場ビジネス研究においてどのように位置づけるのかについてのフレームワークづくりを継続した。先進国市場のみならず,新興市場においても企業の競争優位構築を可能にするすぐれた経営資源が賦存していることが知られるようになった。しかし,そうした経営資源をいかに発見し,アクセスし,自社内に取り込み活用するかは,組織能力の如何に係わっている。メタナショナル経営を企業活動とビジネス立地が共進化する経営プロセスと理解したうえで,事例の発掘調査を進めた。本プロジェクト最終年の本年度は,メタナショナル経営の事例を,付加価値創造におけるライン活動の各段階とオーバーヘッド活動の各領域ごとに整理するとともに,新たに発掘した事例を深耕し,新興市場への浸透を図るうえでの教訓を導出した。 具体的には,原料調達におけるロシアのボーイング,生産プロセスにおけるフォードやブリヂストン,それにインドのペプシコーラの事例,ロジスティクスの香港・利豊であり,これらが生産活動における優れたビジネスプラクティスの事例である。マーケティングではマーケティング計画のパナソニック,John Deere,GE,販売活動のヒンドゥスタン・ユニリーバ,ヤクルト,アフターサービスのグラミン銀行(バングラデシュ)である。オーバーヘッド活動では,コーポレイト・ガバナンスにおけるインドの主要企業,マネジメント手法の韓国企業,ビジネスモデルのダノン,基礎寄り研究のロシア・味の素とブラジル・IBM,製品開発のホンダ,フィリップスである。 取材を通じて,事例の発掘と分析を進めたのは,フィリピンのフレンチ・ベーカー,ブラジルのオービタル・エンゲルハリアなどである。現在,事例執筆の準備を進めている。
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