研究概要 |
報告者は国際ビジネスを企業活動とビジネス立地の相互作用と捉えている。メタナショナル経営論を新興市場ビジネスに適用するうえで,この前提は本研究の遂行を容易なものとしてくれた。企業は新興市場に存在する優れた経営資源にアクセスし,組織内で活用し,競争優位につなげようとする。その一方で,ビジネス制度に伴うコストを極小化し,新興市場ビジネスを優位に展開すべく努力している。メタナショナル経営論をこのように広義に捉えることによって,新興市場におけるビジネス活動を簡潔に把握することができた。 本研究プロジェクトにおいて,新たに発掘したり,メタナショナル経営論に基づく新たな意味づけを行ったりした主な事例は以下のとおりである。生産関連ではロシアにおける米ボーイング社とフィンランドのノキアン・タイヤである。マーケティング分野でバングラデシュのグラミン銀行,John Deere の農機,GE の医療機器などである。ビジネスモデルについては,ヤクルトの新興市場ビジネスやインドのヒンドゥスタン・ユニリーバなどである。研究活動の分野ではロシアの味の素,ブラジルの IBM であり,製品開発はホンダの中国での合弁事業などである。 現在準備中の新興市場ビジネス論に関する単著のなかで,理論的検討と発掘事例,事例分析を紹介し,本プロジェクトの成果を学界,ビジネス界,社会一般に還元する予定である。
|