研究概要 |
公開責任のない組織について、当初は非上場の地域企業に着目していた。その成果の一端は、2011年9月の多国籍企業学会西部部会において地域企業の国際展開にかかわる報告を行った。また、「多国籍企業の史的検討」と、サービス化の進展の現状と影響に関する「サービス化と国際ビジネス」については、2012年に刊行された2冊の書籍の各1章として所収された。しかし、その後、2011年3月11日の東日本大震災の復興への寄与の視点から、公開責任のない非営利組織の多国籍展開の研究に集約的に注力した。これまで行ってきたパートナーシップにかかわる組織哲学、組織特殊性、組織機動性の研究蓄積をふまえ、2012年5月の国際ビジネス研究学会において、19世紀終わりから第1次大戦までに見られた当時の先進国(ヨーロッパ)から途上国(米国など)への資本移動に大きな役割を果たしたフリー・スタンディング・カンパニー(FSC)の進化形態である人的組織の合同会社および有限責任事業組合、そしてFSCの非営利組織としての2008年施行の物的組織・一般社団法人が全事業提供型として国際展開が可能である点について言及した。2012年8月の16thAnnual Conference, European Business History Association , Paris において、"NEXT NON-PROFIT TYPE THE FREE-STANDING IN JAPAN‐Introduction of General Associational Corporation and Historical and Derivative Flow of Mediterranean Partnerships‐"(原タイトル"New Challenge towards The Free-Standing: The Free-Standing Company (FSC) Headquartered in One Country but Operated in Another can Be Non-Profit? ")として、5月の学会報告論文を深化させたものを報告した。そして、2013年3月に刊行されたJapan's 3/11 Disasters as Seen from Hiroshima : AMultidisciplinary Approach に所収された第6 章"The 3/11 Disaster from the Perspective of International Business:The Free-Standing Association and the Possibility of Mutual Support"において、公開責任のない多国籍組織の国際展開による東日本大震災からの復興への寄与、また多様な組織形態による復興の可能性について言及した。今回の研究では、一般社団法人が2008年の法律改正にともない全事業への関与が可能となった点、これによって非営利多国籍組織としての国際展開の可能性が深まった点をとくに明らかにした。この貢献は、営利と非営利の接点の視点からかんがみても、今後への示唆は大きいものと考える。ただ、当初予定した多国籍組織間の提携・協働の活用の側面、またグローバル・ガバナンスの側面については、十分に論究できなかった。これらについては今後の課題としたい。
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