研究概要 |
本研究の目的は、日本企業の海外直接投資行動パターン、特にバンドワゴン的投資行動を明らかにすることである。対象としては、90年代以降の日本企業の対中直接投資を扱う。対中投資を対象とすることで、不確実性の高い市場への参入における日本企業の海外直接投資行動パターンを明らかにするとともに、企業間の相互作用パターンと企業のパフォーマンスの関係の分析を行う。 こうした目的に基づいて、当該年度において、先行研究、一次資料、二次資料(商用データベースの情報も含む)などの広範囲なデータを探索的に分析することを試みた。具体的には、不確実性の高い市場への参入を分析するために、日本企業の対中投資に関するデータベースの構築へ着手した。今年度は特に、自動車部品メーカーの対中投資に焦点を絞った。その理由は、自動車部品産業のおいては、垂直的な関係(取引関係)と水平的関係(競争関係)の双方が重要であり、その2つの企業関係が対中投資の意思決定へ与える影響を検討できると考えたからである。そのデータベースに基づいて、試験的に実証分析を行い、その成果をワーキングペーパーのとしてまとめた(Takenouchi, Takahashi and Saito, 2011)。暫定的ではあるが、垂直的な関係が強い影響を与える業界においても、水平的な企業間関係が直接投資の意思決定へ影響を及ぼすことが明らかとなった。このデータベースに関しては、次年度以降においても整備を続ける予定である。こうした計量研究と並行して、企業への面接調査を実施し、その成果についても論文の形で発表した(齋藤、2010)。 これら2つのことに基づいて、分析枠組みの構築を進めた。分析枠組みについては、検討中であり、次年度も引き続き検討を行う予定である。
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