研究課題
基盤研究(C)
本研究は、個人が知識を効率的に吸収・移転するネットワークの構造を探る中で、組織内・企業間・産業間の知識移転という広範なイノベーションプロセスを把握することを目指している。本研究では、全ての研究開発レベルに共通した基盤、すなわち研究開発成果の最小単位である技術関連の知識に焦点を当てている。本年度は、日本の電機メーカーA社の技術者に対して平成19年度に配布した質問票の分析を行った。また、その分析結果を踏まえて同社の技術者21名に対してインタビュー調査を行い、さらには第2回目の質問票調査の設計、配布、回収を行った。Allen(1977)によると、企業間の知識資源の移転には情報収集機能と情報伝達機能の双方を兼ね備えたゲートキーパーの存在が重要とされるが、第1回目の質問票調査の分析とインタビュー調査の結果、2つの異なる特徴を有するゲートキーパーの存在が明らかになった。ひとつは、学術的知識の移転に貢献するゲートキーパーであり、もうひとつは業界の知識の移転に貢献するゲートキーパーである。それぞれが異なる知識移転ネットワークを有しており、今後は移転を促進する要因を探っていくことを考えている。これらの結果は、情報の種類によって、移転に有効なゲートキーパーのタイプが異なることを意味しているものと考えられる。また、本研究では、組織のボトムである技術開発の現場における知識移転構造と、組織のトップであるトップ・マネジメントが行う技術開発動向との関係の双方に着目することによって、イノベーションの生成から発展までの経緯を観察できるものと考えている。後者については、本年度はトップ・マネジメントが戦略変更に与える影響について、実証研究を行ったが、今後は具体的な技術の方向性への影響についても探っていくことにする。
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Academy of Management Best Paper Proceedings, San Antonio
巻: 71