研究課題/領域番号 |
22530426
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
中内 基博 東洋大学, 経営学部, 准教授 (20339732)
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キーワード | 知識移転 / ネットワーク構造 / イノベーション / 技術 |
研究概要 |
本研究は、個人が知識を効率的に吸収・移転するネットワーク構造を探る中で、組織内・企業間の知識移転という広範なイノベーションプロセスを把握することを目指している。平成23年度は、質問票を配布したA社の技術者間の知識移転ネットワークに焦点を当て、情報収集機能と伝達機能の双方を兼ね備えるというゲートキーパーから外部の情報やその他重要情報がどのように組織内に伝播していくのかについて、研究成果をまとめ、学会報告を行った。分析の結果、ゲートキーパーから情報を受け取り、一般技術者に情報を橋渡しするトランスフォーマーの存在は、先行研究の見解通り、ネットワーク図では確認された。ただし、先行研究とは異なり、トランスフォーマーと思しき人物はゲートキーパーの情報を伝達しているわけではないことが明らかになった。外部情報は、ゲートキーパーとトランスフォーマーおよびチームマネジャーを中心としたコアなメンバー間で情報共有されるが、その他の技術者には、外部情報はそのままの形では伝達されず、開発指令として形を変えて伝達されるか、もしくは過去の開発の経緯についての情報提供など、主に指導的な情報提供が実際には多いことが明らかになった。こうした結果が示唆しているのは、ネットワーク構造のみで知識移転を把握する・ことには限界があるということと、実際に移転されている情報内容にまで言及していくことの必要性である。個々の技術者が求める情報の内容および質や量は異なることが予想されるため、ネットワーク構造だけでは、知識移転の実態をとらえることには限界がある。したがって、ネットワーク構造に加え、情報の獲得者と提供者間の信頼や伝達される知識の種類など、移転を促進・阻害する他の要因を考慮する必要がある。さらに、追加分析の結果、情報提供者側からみた知識移転の要件と、情報獲得者側からみた知識移転の要件では、ファクターが異なる可能性が示唆された。これらについては、次年度以降の実証分析にいかしていく。また、これとは別に、トップ・マネジメントによる技術動向への影響の下調べとして、戦略変更への影響を考慮したモデルを構築し、分析を行い、発表を行った。技術動向への影響については来年度、継続して研究を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
質問票調査の分析については、予測された分析結果が得られており、論理の構築に若干の時間がかかっている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
複数の変数を考慮した分析モデルを構築しなければならない関係で、ロジックが複雑になる可能性がある。当該分野はそれほど先行する研究蓄積がないため、学会への出席およびアメリカの研究者の協力を得て、論理の精緻化を図る必要があると認識している。
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