本研究は、新技術を開発したのにもかかわらず、その用途がわからないまま商品化できていないシーズについて、その用途を思いつかせる方法を開発し、同時にその方法の理論を明らかにすることを目的とする。簡単にいうと、シーズを商品に結びつけるための発想法の開発とその理論の研究である。そして本年度の研究目的は、開発した発想法を企業に応用してみることである。 応用に応じてくれた企業は、大阪にある食品のアルミ箔製の皿やカップを製造・販売している会社である。当社の製品は、弁当の副食品を他の副食品と混ざらないように、副食品を皿やカップに盛りつけて、他と区分けする小さな容器である。当社の技術(シーズ)はいくつかあるが、ひとつはアルミ箔でカップ状の容器を作ることである。このシーズを起点にして、本研究で開発した発想法である、「できる展開」を行った。参加者は管理系と技術系の社員10数名であった。 種々の展開がなされたが、そのひとつは、つぎのようなものである。「アルミ箔製のカップを作ることができる→(それができると次に何ができる?)→アルミ箔製のカップにその周囲と混ざってはいけないものを入れることができる→(それができると?)→、混合されてはいけないもの同士を独立に小分けして同置することができる」。 ここで、そのようなものを挙げることにした。参加者に、ブレーンストーミング風にたくさん挙げてもらった。たとえば、つぎのようなものが挙げられた。海苔とお浸し、あるいはカツと豆腐など、食品例がたくさん挙げられた。しかし、食品に限る必要はないことを述べると、素材や部品などの応用例が出てきた。たとえば、紙と糊あるいは砂と粘土など。このような例が数多く挙げられた。そしてそれら用のアルミ箔製のカップを作れば、新製品として市場に投入できそうであることがわかり、本手法の有効性が例証できた。
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