今年度の研究成果は著書2件、招待講演6件であった。この年度は、環境ビジネスに関して影響力が大きいイベントが数多く見られた。原発の比率を含めた国の中長期的なエネルギー政策に関する初めての国民的議論、再生可能エネルギー全量買取制度の導入、京都議定書体制の実質的な崩壊など、調査意欲を掻き立てられた年であった。招待講演においては、国のエネルギー政策、未熟な再生可能エネルギーが多様な影響を市場に与える点を分析した。 今年度に出版した著書「社会変革期の成長戦略:グリーンラッシュで生まれる新市場を狙え」は、3年間の研究成果をまとめたものである。元々、エネルギー業界、電力業界、リサイクル業界など限られた業界が担ってきた環境ビジネスに、極めて幅広い業界から多くの参入が見られる。この過程でシナジー効果が生まれ、新しい市場が形成される状況を「グリーンラッシュ」と名付けた。グリーンラッシュにおいては、グローバル経済の成長過程とは異なる特徴を見出すことができた。それは、下記の三点の修正が起きていることである。 1 飽くなき経済成長追及の修正、2 集中型システムの修正、3 規制緩和要求の修正 グリーンラッシュとそこから生まれるベンチャー企業のイベーションは今後の経済成長に貢献する可能性が高い。したがって、本研究のテーマは長期的に継続して調査する意義があると思われる。
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