本年度は、3月11日に発生した東日本大震災によって変更・延期となった調査が幾つかあった以外は概ね研究計画通りに実施された。 特に2010年11月に集中的におこなった業界団体や市役所、業界各関係者への調査交渉はこれまでの経緯もあってか殆どの交渉において調査に前向きな回答を得ることができ、今後予定している高回収率を目指すアンケート調査の基盤は徐々に整いつつあるとみている。現在は以前の研究を踏まえた仮説の整理および精査を継続的におこなっており、今後はアンケート調査設計およびパイロットスタディを実施していく計画となっている。 ヒアリング調査では幾つかの目新しい成果を上げることが出来た。特に産地の生産動向に大きな影響を持っていた機械商社の動向および歴史を詳細に押さえることが出来たのはこれまでにない成果の一つである。また、20年ほどの間、業界の中心的なビジネスモデルとなっていたライセンスブランドのメガネ枠業界への導入プロセスについてもヒアリングによって詳細なプロセスを記述できるだけのデータを取得することが出来た。またメガネ枠よりも遙かに淘汰の進んだレンズメーカーの動向について、徐々に調査を進めつつある段階である。これらにより、当該業界全体の詳細な記述が可能となる。 海外文献のレビューは継続的に実施している。成果としては2011年度中に論文として公刊する予定となっている。 2010年度はこれまで特定の工場を持とうとしなかった大手メガネチェーンが、経営危機に陥った老舗の工場の資産を譲り受けるなど、これまでにない動きとそれによる業界再編が進んだ年となった。これは地場産業であるメガネ枠産業集積が、まさに環境変化に直面しつつ変化を模索している最中であることを示している。研究計画に想定されていない事態についても臨機応変に対応し、重要な事例データを蓄積しつつ、定量的実証データを蓄積することをめざしている。
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