研究課題/領域番号 |
22530437
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
秋庭 太 龍谷大学, 経営学部, 准教授 (00340282)
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キーワード | 産業集積 / 地域企業 / ネットワーク / 集積間比較 / 定量研究 |
研究概要 |
2011年度は研究の目的自体の変更はないが、これまでに想定していたプランについていくつかの変更を判断することとなった。それは研究範囲の選択と集中についてである。その理由はこれまで進めてきた鯖江産地のデータ収集が大幅にすすみ、業界誌のおよそ40年分のバックナンバーのすべてを入手することができたことがきっかけである。また同様にインタビュー調査も多くの協力者のおかげで、大きく進展を見せた。現在インタビュー調査も公式なものは50本を超え、文字数も150万字を超えている。インタビューデータはほとんどの場合、インタビュイーのその時点の認知に偏っており、その認知に影響を与える歴史的事実について言及されることはあまり無い。しかし、業界の歴史を包括的に把握したうえで、インタビューデータと照合することで鯖江産地の歴史的プロセスを含めた全貌を記述できる可能性が高まってきた。 これらが研究プランに及ぼした影響は、鯖江をさらに詳細に深掘りするか、それともこのまま一般化をはかる研究フェーズに移行し、他の集積との比較に移行するかという問題である。産業集積研究へのアプローチはいくつか存在するが、本研究はこれまでの集積研究に新しいパースペクティブを提供することを意図している。そのために、このまま鯖江産地を徹底的に深掘りした上で、これまでの研究と比較検討する方法がもっとも大きな成果を生み出す可能性が高いと認識するに至っている。もちろん、詳細な研究プランは状況に合わせてつねに変動するが、現状としてはこれまででもっともよい状況になってきているといって良い。 もちろん集積内部のみならず、集積に発注をかける都市部の企業へのヒアリングも進展している。発注元の企業も大手から個人まで、多くの方からデータを収集できている。トライアンギュレーションおよび理論的飽和を目指して今後もデータ収集を継続的に行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
おおむね順調に進展していると判断しているが、2011年度は東日本大震災の影響で研究費支給の3割カットの可能性が通知され、研究をスケジュール通りに動かすことが難しかった。最悪の場合、研究の一部を来年度に回すことを想定し、リスケジューリングをおこなったが結果的に年度後半に予定通り支給されることが決定したため、年度単位で見たときにはおおむねスケジュール通りといえるだろう。しかし、早い段階で取得するはずだったデータが年度の遅い段階にずれ込んだため、それらを活用しての研究は遅れ気味であるといえるだろう。
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今後の研究の推進方策 |
産業集積研究に必要なデータは膨大であるため、すべてを入手することはできない。しかし予算制約の範囲で最大限の努力をする方向性をもっている。また、関連する領域の研究者と連携を図りながら、効率的に研究を進めていく予定である。また2011年度の研究の成果として、これまでにない産地への接近が可能になりつつあることがあげられる。これまでの集積研究に埋もれることのないような、オリジナリティが大きく、理論的な貢献度の高い研究を目指していきたい。
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