研究課題/領域番号 |
22530437
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
秋庭 太 龍谷大学, 経営学部, 准教授 (00340282)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 産業集積 / 地域企業 / ネットワーキング / 定量研究 / 内容分析 |
研究概要 |
本研究は、研究の過程でそれまで予測していなかった業界誌のバックナンバー40年分のデータを獲得することができたため、その可能性が大きく広がることとなった。それに伴って研究計画を一部拡大・変更し、インタビュー及びアンケート調査を中心とした研究方法のみならず、大量の2次データをもちいた歴史的分析を内容に付け加えている。以上の点に於いて、研究計画は当初の予定を良い方向に変更しながら進行していると考えている。 前年度に入手した業界誌のデータは2誌でおよそ40年分と30年分であった。しかし、このデータは同一の出版社からのものであり、業界のデータとしてはバイアスが予測されるものであっため、当年度は別出版社から、同じように眼鏡業界誌のバックナンバーおよそ40年分を入手し、バイアスを回避するように心がけた。これらの新データの複写及び電子化に大きくエネルギーを費やす形になり、アンケート調査およびインタビューの予定そのものは遅れが生じているのは事実であるが、これは業界史をきちんとおさえることによってアンケート及びインタビューの精度向上が明らかであるためである。また電子データ化されたものは現在、データマイニングによる分析の可能性を探っている。 現在、眼鏡産業集積は、日本の産業集積企業がダイナミックに拡大していった時期の中心的プレイヤーが健在であり、かつ業界誌などがアーカイブとして存在しているため、産業集積ならびに起業家のメカニズムを総合的にとらえるための条件が整っている数少ない事例である。現時点までに必要なデータの入手およびインタビューを依頼するための関係作りはほぼ終了しつつあり、今後はアーカイブデータから得られない部分と、確認のインタビューをおこなう段階となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は研究過程において重要なデータを入手したことにより、当初の研究計画を拡張して研究計画を遂行している。当初はこれまで蓄積したインタビューデータのトライアンギュレーションおよび工業統計を活用して研究対象の産業集積の特徴をつかみ、そこから産業集積の特徴を測定する変数群を抽出する予定であった。しかし、インタビューデータをつきあわせる中で、内容を解釈するのが難しい点が散見された。その原因は、インタビュイーの語りはそれまでの業界の歴史を前提としており、2005年から研究をスタートさせた研究者側の認知枠組みとは大きく解釈が異なることにあり、その差をインタビューの中で埋めることが非常に困難であると考えられることであった。これらの差を埋めるための業界史や文献、研究の蓄積は残念ながら現存せず、結果的にまずは業界を取り巻く環境の変化と業界史を、われわれがインタビューデータを解釈するためのリファレンスデータとするための作業を開始することになった。 作業中のデータは業界誌3誌であり、複写および電子化が進行中である。またこれらの業界のアーカイブデータが入手可能になったので、電子化の進行とともにOCR化にくわえて、データマイニングによる内容分析の準備も進行中である。これらは現在研究対象としている産業集積のみならず、他の分野の産業集積においても応用可能な研究方法に発展する可能性がある。 業界誌の内容分析の準備が進んでいる一方で、インタビューおよびアンケート調査は予定通り進行していない。しかし、インタビューのチャンスを十分に生かすためにも、業界の歴史と流れを完全に抑えた上で、インタビューおよびアンケート調査を実施する形に計画を変更して作業を進行中である。自己評価としては(3)としたが、研究そのものの価値はむしろ増大していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
まず、一刻も早く入手した業界誌アーカイブデータを整理し、産業集積を含む業界の歴史を概観するリファレンスデータを完成させることが急務である。 しかし、膨大な量の業界誌アーカイブデータは研究計画当初から予定されていたものでは無く、この量のデータを短時間で複写および電子化する予算と人員計画は当初は存在していなかった。そのため単純作業をこなすための作業人員を十分投入できていない事については認識している。 限られた予算を十分に活用して成果を出していくためには、一気にすべてを複写し電子化、OCRからデータマイニングという流れに持って行くのではなく、必要なデータを必要に応じて分析できるような作業手順を新たに作成し、研究期間内に確認のインタビューおよびアンケート調査を実施できるようなリスケジューリングをする必要があるだろう。バイアス回避のための他出版社の業界誌データが入手可能となったのは2012年の2月であり、その部分の作業はまだ整理し切れていないが、早期に作業手順の作成とリスケジューリングを実施してより能率的な研究遂行を目指すこととしたい。
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