本年度の研究成果は、タイにおけるスキル蓄積型人材育成の事例研究についてヒアリング調査を中心に行い、以下の点を明らかにした。 第1に、もっとも製作難易度の高い金型の1つとしてあげられる自動車ボディ外板用のプレス金型製作について、日系の大手金型メーカーからタイ子会社への人材育成を通じたスキル移転プロセスの調査を行った。人材育成のための重要なツールであるスキル評価基準の整備状況と評価方法については、日本本社と同じ標準作業書毎に、ローカルのフォアマンが日本人出向者と共に、1(指導を受けながら実施可能)、L(一人で実施可能)、U(他の作業者を指導できるレベル)の3ランクの評価を行い、部門毎のスキル分布の状況を把握し、作業分担、およびスキル訓練計画を作成し、設計、加工データ作成、機械加工、仕上の各工程のうち、機械加工、仕上は100%、現地にて実施されていることに加えて、一部の金型については設計、加工データの作成が現地において可能になっていること。 第2に、タイローカルの中小金型メーカーへの金型製作技術の能力向上巡回指導について前年度に引き続き調査を行った。日本人専門家へのヒアリングおよび指導に同行し、金型製作の基本管理スキルの指導方法および、具体的な成果(品質、コスト、納期の向上)について議論を行った。日系企業と合弁事業ができるレベルには達しないものの、現地日系企業からの受注増に結びつくレベルに達していることや、指導に同行させることによりタイ人指導者(専門家)育成も行っていることが明らかとなった。
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