今年度は、教育を対象としたマーケティング(以下教育マーケティングという)に関する先行研究の検討に焦点を当てた。 まず、教育マーケティングが米国において発展した1975年以降の所論を手がかりとして、カリキュラム開発にいかにマーケティングを適用すべきかを検討した。その結果、教育マーケティングにおいて重要となる「社会的マーケティング志向(societal marketing concept)」実現の方途を新たに明示することができた。 次いで教育を対象としたマーケティングについてサービス・マーケティングの視点から論じた論稿を考察することにより、企業を対象としたマーケティングとは異なる教育マーケティングの特質について検討し、組織、提供するサービス、顧客という3つの側面から教育マーケティングの特質を提示した。 それらの特質が見られる根底には、教育サービスがプロフェッショナル・サービスであるという特質を持つという点が挙げられた。今後は、プロフェッショナル・サービス・マーケティングに関する先行研究の成果から、教育学分野の研究においてこれまで論じられてこなかった教員の職務に関する新たな示唆を得ることにより、教育をマーケティング研究の視点から検討する意義が再確認できるように思われる。更に、教育サービスにおける「クオリティ・ギャップ」の概念に着目し、その中における「イデオロギー・ギャップ」をどのように解消するかが重要な論点になることを示唆した。
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